さらばjunkie
出会いがあれば別れがある。
そんな当たり前の事実が唐突に突きつけられた。
冷たい冬は少しずつ、しかし足跡を残すこともなく去りつつある。
代わりに霞む青空と僕を蝕むアレルゲンを引き連れて春がやってきた。
そんな春の訪れと共に僕は別れを告げなければならなかった。
自分の無力さが愚かしい。どうすることもできず、僕はただ去りゆくのを見ていることしかできなかった。
冬は僕の拠り所を連れていってしまったのだ。
3月19日。
この日を最後にラーメン山岡家の牛もつ味噌ラーメンはメニューから消えることとなる。
僕は堪えきれず、名残惜しい気持ちのまま牛もつ味噌ラーメンと対峙した。
また来年。また来年、ここで会おう。
寒い冬にぴったりのこのメニューをお召し上がり下さいという店内のアナウンスが呪いの言葉のように僕の頭の中を反芻する。
何故冬だけなのか。
春でも夏でもあっていいじゃないか。
恨めしく思いながら麺をすする。
しかしラーメンは相も変わらず僕を幸せな心地にさせてくれた。
食べ終わり店を出る。
今日は雨は降っていない。
相棒に乗り込み煙草に火をつけた。
満腹の幸福感と期間限定の喪失感を煙と共に窓から吐き出す。
…明日からの期間限定のエビ塩ラーメンは僕をどんな気分にさせてくれるのだろう。
一寸先は闇。
塞翁が馬。
明日は明日の風が吹くだけだった。