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その日は雨だった。

まだ2月だというのに、水分をたっぷりと含んだ雨雲は雪を降らずことはほとんどなく、今日は決して小さくない雨が車のフロントガラスを細やかに叩いている。

 

せっかく露天風呂に入ろうと思ったのに。

家からほど近い銭湯で露天風呂に浸かる予定がこの雨じゃ台無しだ。仕方がないので諦めることにした。

 

昼間はこの時期にしては珍しく上着もいらないほどに暖かで、春の訪れを感じさせるほどであったが夜になって雨が降りいっぺんに冬に連れ戻された。

 

極寒というほどではないにしてもこの季節の雨は冷たく、車内にいても肌寒い。

 

何か食べて帰ろう。

 

露天風呂に浸かることができなかったぶん、何か温かいものがいい。そう思うと行き先はひとつだった。

 

山岡家。

24時間営業のラーメン屋である。若者も多くいるが、トラックの運転手などの運送業に携わるやや草臥れた壮年の男性も多くいるラーメン屋。

 

雨が降りしきる中駐車場に着くと急いで店内へ足を運ぶ。雨だからか停めてある車は少ない。

国道沿いにあるこのラーメン屋は近所の住民以外は車がなければ来ることができない。普段はトラックなども多く停まっている店の前の駐車場はいつにも増して寂しげだった。

 

しかし店内にはいると威勢の良い挨拶が聞こえてきた。そして次の瞬間、鼻腔を刺すような豚骨の匂い。

 

僕は券売機の前に立ち、いつものラーメンを注文した。

 

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期間限定の牛もつ味噌ラーメン。

これを始めて食べたのは先週のことだった。

あまりの美味しさにこれで早3回目である。

 

なかなか噛み切れないが旨味が詰まった牛もつとほのかに辛い味噌味のスープが絶妙だ。

 

ここ一年ほどよくラーメン屋に通うようになったが、こんなにも頻繁に同じラーメンを食べたことはなかった。

 

美味い。よくできたラーメンだ。

期間限定などと言わず通常のメニューに加えて欲しい。そんな想いが頭をめぐる。

 

あっという間に完食し、店外の喫煙スペースで一服しながら余韻を楽しんだ。

 

狭い屋根の下、雨がギリギリかからない程のスペースで煙草を吸う。雨は少し弱くなっていた。

 

これから改めて風呂屋に行くのはどうだろう。

そうとも考えたが満腹の胃袋を抱えた身体とその脳みそはこれ以上の活動を拒んでいるようで、どうしても風呂に行く気にはなれなかった。

 

このまま帰宅して狭いユニットバスでシャワーを浴び、ゆっくり酒でも飲もう。

露天風呂はまた来週にでも行けばいい。

 

気づけば2本目の煙草も短くなっていた。

雨はまだ止まない。

幸福な満足感を覚え、今日が終わろうとしていた。

 

 

 

 

あとがき

実話です。

というか今喫煙所で書きました。

是非色んな人に食べてもらいたいです。

 

デワデワ